「リファレンスチェック」をご存知だろうか。一般的に知られた言葉ではないと思うが、転職活動経験者の中には聞いたことがある人も多いだろう。
今回はこの「リファレンスチェック」について、複数回の転職経験がある私自身の体験談をご紹介する。
リファレンスチェックとは?
まずそもそもリファレンスチェックとは何か?
リファレンスチェックとは企業が中途採用の時に用いる手法の一つ。最近導入する企業も増えていて、特に外資系企業では普及しているようだ。リファレンスチェックとは簡単に言えば、「応募者の評価を第三者が行うツール」のこと。
もう少し具体的に言うと、今在籍している(以前していた)上司や部下に対して、応募者がどういう人物かをwebなどで回答させることだ。転職活動時、求職者は当然のように自分のことをアピールする。それそのものは悪いことではないし当たり前のことだ。ただ、雇う側の企業の立場から言えばできるだけ実態に近いところを知りたい。重要なポジションであればなおさらだ。
そこで登場するのがリファレンスチェック。略歴や成果、日常の行動などで応募者が虚偽の話をしていないかをチェックする仕組みだ。日常の働きっぷりをよく知る人にリサーチをかける、といえばわかりやすいかもしれない。
そしてこの”リサーチ”を企業がスムーズに行えるようなSaaS系のサービスも複数あるようだ。民間企業が手がけるサービスが存在しているということは、一定の需要があるマーケットとして成り立っているということだろう。
リファレンスチェックの流れ
リファレンスチェックは基本的には最終面接前や後、といった内定直前のフェイズで聞かれることが多い。書類選考や面接を通過していくと、突然企業の採用担当から「リファレンスチェックをしたい」と言われる。応募者からすると唐突感があるので「?」となるかもしれない。実際、私も転職活動をしている時にリファレンスチェックの提出を求められ、「なんですかそれ?」と思わず聞き返してしまった。
私が経験したことがあるのはスタートアップ企業の1社だけ。スタートアップの場合は少数精鋭ということもあり、それだけ慎重に採用したいということだろう。なお、私が受けた企業の場合は最終面接時にリファレンスチェックをやっていいかどうかの確認があった。断ることもできたようだ。ただ、断ったら選考に不利になるのではないかと考えてしまい受けざるを得なかった。転職活動中は求職者側がどうしても意識の面で下になる。選択権があったとしても断るのはなかなかの度胸が必要だと思う。
そのリファレンスチェックだが、基本は現職の上司一人、部下一人に対して回答を求めるようだ。
私が経験した企業の場合はリファレンスチェックを行うサービスの利用を求められた。応募者が受験先企業に対象の人のメールアドレスを渡すと、その人にチェック用URLが送信されるのだ。URLをクリックすると入力フォームが開き、設問はフリーワード記述で一問300文字程度で、そうした設問が10問くらいあるので、記入者にとっても意外と時間がかかる作業となる。
どんな設問かというと、基本的には対象者の働きぶりに関することだ。勘違いしてはいけないのは「推薦状ではない」ということ。つまり求職者を褒め称えるような文章が求められているわけではない。一緒に働く上でのリスク、マネジメントする上で気をつけるべきことなどを記入する項目もちゃんとある。多角的に求職者のことを見極められるようになっているわけだ。
なお、どのような内容が記入されたかを求職者が確認することはできない。もちろん、記入者に依頼することはできるだろうがなかなか依頼しづらいはず・・・。また、ボリュームがあったり入力時間が制限されていたり、入力内容を作為的に作ることができないような仕掛けになっているようだ。
リファレンスチェックで気をつけるべきこと
さて、ではリファレンスチェックを求められたらどんな事に気をつけなければならないのだろうか。ここでは求職者側視点で考えてみたい。
転職活動中ということがバレるので、誰に聞くかは要検討
そもそもだが、「希望転職先に提出が必要なので協力してほしい」と言うことを上司や部下に伝える必要がある。私の場合は会社を辞めることを以前から上司に伝えていたのでこの点は困らなかったが、普通は転職活動する時って周囲に黙ってすると思うので、部下はともかく上司に依頼するのは困るのではないだろうか(笑)。
対策としては「元上司」「元部下」に依頼するということだ。今現在の直接的な利害関係はない人たち、という意味で。企業によっては現在の上司部下、と限定されることもあるようだが、この辺りは事実関係を調べるのは困難であろうし、人間関係ができていれば「現在の上司部下の設定で」とやり過ごすこともできなくはないと思う。
しかし、会社を辞める時の理由の大半が人間関係、とも言われている。自分の周囲の人間関係が悪いから退職する人も多いと思うので、このチェックツールは本当に恐怖でしかないと思う人も多いだろう。
完全替え玉詐称は難しい
ただ単に言葉を入力するだけなら、上司に依頼せずに自分のフリーメールアドレスを使って替え玉入力することもできるかもしれないが、リファレンスチェックはその辺も抜かりがない。記入者は記入時に免許証などの身分証明書をアップロードしなくてはならないのだ。
中には、身分証明書を手元に持った自撮りの写メアップロードを求められた、と言う人もいます。その写真を撮ってもらって取り寄せて、自ら代行することもできないわけではない。でも、そこまでの負担を強いるのも申し訳ない気がしてくるものだ。正直、そこまでするか、という気もする。完全に性悪説に立った仕組みではあるが、、、、。それだけ経歴詐称をする求職者が多いということなのかもしれない。
入力時期は短い。やはり人選を考慮
そしてリファレンスチェックは入力期間も短く、1週間以内に入力を求められることが多いようだ(もちろん、企業による)。上述したとおり、最終選考間近のタイミングなので、企業にとっては早めに合否を出したい、と言うことなのだろう。また入力期間を短くすることで対策を取られにくくする、という意図もあるのかもしれない。
応募者にとってはその辺りも考慮に入れて人選しなくてはならない。あまりにもお偉い上司の方にお願いするのに時間がないと失礼にあたるかもしれないからだ。前述の通り、入力内容も簡単なアンケートではなくボリュームのある設問が並ぶ。気軽にできるものではなく、さらに期間も短い。依頼する人のスケジュールも鑑みながら依頼する必要があるのだ。
リファレンスチェックで落ちることはある?
さて、ではこのリファレンスチェックは落ちることはあるのだろうか?結論から言うと、面接でよほどの虚偽報告をしていない限りは落ちることはないそうだ。
企業としても、応募者にリスクを取らせていることは重々承知なので、あくまでこれまでの面接内容のエビデンスとして取得するケースが多い、とのこと。形式的な行事であり、応募者に対して「虚偽の話はできない」とプレッシャーを与える意味合いが強いのかもしれない。
まとめ
いかがだっただろうか?日常の行動が返ってくるリファレンスチェック。いろいろ考えることもあるだろうが、やはり本質は日頃から人間関係を大切にしながら働かないといけない、と言うことなのだと思う。
入力者にとっても非常に負担がかかる作業ではあるが、人間関係ができている間柄なら「お前のためなら、一肌脱ぐよ」となるだろう。そうした依頼ができる人間関係を築けるのかどうかも、求職者の魅力の一つなのかもしれない。