ハイクラスのビジネスパーソンに人気の転職先の一つにコンサルファームがあります。
平均して高い報酬水準や、企業経営や時には社会の課題解決に携わるやりがいの大きさがその人気の理由です。
そんなコンサルファームは転職の難易度が高いのも事実。特に他業種から転職するとなると、コンサルに関する専門知識が乏しく、ほぼ不可能なのでは?と考える方も少なくありません。
結論からいうと、他業種からのコンサルへの転職は決して珍しくなく、コンサルファームのタイプやチームを選べば、転職を実現させられる可能性は充分にあります。
この記事では他業種からコンサルファームに転職する方法や、求められるスキル・経験を紹介します。
コンサルファームは他業種からでも積極的に採用をおこなっている
コンサルファームは一般的なイメージ通り、人材の流動が早く、その分継続的に中途採用をおこなっています。
コンサル経験者を多く採っている一方で、主に次の3つの理由から、他業種のコンサル未経験者も積極的に採用しているのです。
各業界の専門知識を積極的に吸収する必要がある
コンサルファームでは各業界の専門知識を常にアップデートすることが求められます。そのためには、それぞれの業界出身者=コンサル未経験者でも、積極的に採用を行なっています。
コンサルファームは世の中のさまざまな事業会社や金融機関の課題解決をサポートするのがメインのビジネスです。
中には特定業種に特化したファームもありますが、ほとんどのコンサルファームは多様な業界の企業をクライアントとして抱えています。
それぞれのクライアントの課題を解決する場合、少なからずその企業が属する業界の深い知見が要求されますが、業界の外から勉強・研究するには限界があります。
そのため、コンサルファームでは、たとえコンサルとしては未経験でも、特定の業界に深い知見や経験を持つ人材を継続的に採用しているのです。
DX案件の需要急増への対応
近年、コンサルではデジタルトランスフォーメーション、いわゆる「DX」が重要テーマの一つとなっており、各社ともDX関連のプロジェクトを盛んに受注しています。
大手のコンサルファームになれば従来よりDXに対応可能なIT関連の人材を雇っていますが、近年では慢性的な人材不足に陥っています。
そのため、DX経験者やそうでなくともIT関連の業務に知見を持つものを積極的に採用しています。その際にはコンサルファームの経験者かどうかはあまり問われません。
IT企業でDXの実行支援の経験があれば最良ですが、たとえば事業会社のなかでITを活用した業務効率化プロジェクトをおこなった経験のある人、DXとまではいかないが、IT業界に在籍していた人などでも、転職の機会は豊富にあるでしょう。
働き方改革などによる人材不足
かつてのコンサルファームの働き方といえば「激務」であるのが大きな特徴で、月100時間以上の残業やタクシー帰りも当たり前というのを覚悟して入社するのが普通でした。
しかし、働き方改革が推進されるなか、企業組織や業務の効率化を案件として抱えるコンサルが「激務」のままというわけにはいかなくなったのです。
この自体に多くのコンサルファームは人材を増やすことで対応する方向に。
当然、人を増やすとなればコンサル経験者だけを採るわけにはいかないので、コンサル未経験でも「コンサルに活かせそうなスキルや知見」を持つ人材を積極に採用するようになっています。
他業種から転職しやすいコンサルファームのタイプ
コンサルと一口にいっても、実際のところファームによって強みとしている領域は異なり、それによって求める人材もさまざま。
その中で、次に紹介するようなタイプのコンサルファームは他業種からの転職できるチャンスが豊富にあるファームといえます。
総合コンサルファーム
経営戦略などの上流から、日常的なビジネス戦術などの下流まで幅広い領域のプロジェクトを請け負うのが総合系コンサルファームです。
大手どころですとBig4(PwC、デロイトトーマツコンサルティング、KPMG、EY)やアクセンチュア、日系ではアビームコンサルティングなどが当てはまります。
これらのファームはいずれも組織の規模が大きく、プロジェクトのテーマもクライアントの業種も多岐にわたっており、それだけさまざまな専門性を持つ人材が在籍しています。
コンサル経験者だけでこれら幅広い専門領域をカバーすることは難しいため、日常的に他業種から人材を雇っています。
特定業種のクライアントに紐づいて対応する産業(インダストリー)のチームであれば、その産業の経験者を積極的に採用しています。
デジタル関連のプロジェクトも多いことから、ITの知見を持つ人材も多く採っています。
戦略コンサルファーム
コンサルファームの中でも特に難易度が高いイメージを持たれがちな戦略系コンサルファーム。
大手ではマッキンゼーやボストンコンサルティング、ベインアンドカンパニーなど多数の外資系コンサルファームが日本でも積極的にビジネスを展開しています。
これらのコンサルファームは確かに難易度が高いものの、実は未経験からでも転職を成功させるチャンスが充分にあります。
クライアント企業の経営戦略上のさまざまな課題解決をおこなうため、まず、クライアントの業界に深い知見のある人材を必要とします。
また、経営戦略や財務、M&Aなどの戦略を策定するうえでは、コンサルファームでこれらの領域に携わった者だけでなく、事業会社や投資銀行など、別の分野で培われた知見を取り入れて、より優れた解決策を模索しようとします。
したがって事業会社の経営企画や財務部、投資銀行のM&A部門などの経験者は、たとえコンサル未経験でも戦略コンサルファームからの内定を獲得する余地は充分にあるといえるでしょう。
ITコンサルファーム
現在では多くのファームがIT案件を手掛けているので、ITコンサルファームの垣根は曖昧になってきていますが、日本IBM、ベイカレントコンサルティング、NTTデータ経営研究所などは今でもITコンサルファームに分類されることが多いです。
これらのファームはそのビジネス領域を背景に、ITに素養のある人材を積極的に採用しており、この条件を満たしていればコンサル経験の有無はあまり重視されていません。
SE経験者であれば、これらのコンサルファームへの転職余地は充分に大きいといえますし、一般の事業会社のなかでシステム運用などの業務に携わった方などでも転職のチャンスは充分にあります。
他業種からコンサルへ転職するうえで求められるスキルと経験
他業種から難関であるコンサルへ転職するからには、未経験であることを補う専門性が求められます。
「コンサルプロジェクトにおいて必要だが、コンサルファーム内では得にくいスキルや経験」を持っている人材は、特に評価されやすいといえるでしょう。
ここではコンサルファームが他業種からの転職希望者に求めるスキルや経験を4つ紹介していきます。
このうち「コンサルに求められるベーシックなスキル」は誰しも持っていることが望ましいですが、それ以降の3つのスキルや経験については、どれか一つでも秀でたものがあれば充分に転職を成功させる余地はあります。
コンサルに求められるベーシックなスキル
他業種から来るとはいえ、転職者である以上は、ある程度即戦力となることが期待されています。
そのため、次のようなコンサルでプロジェクトを推進するために基本的に必要なスキルは備わっていることが求められます。
- コミュニケーション能力
- 論理的思考力
- 課題解決能力
- 新たな知見を積極的に取り入れる好奇心と積極性
これらは転職採用における採用試験や通常面接、ケース面接などを通じて判断されます。
いずれも事前対策の余地があるポイントなので、他業種からコンサルファームへの転職を目指している方は準備万端の状態にして臨みましょう。
特定業種の専門的な知見
こちらはスキルというよりは業界の専門的な知見という方が近いと思います。
ここまでで紹介した通り、コンサルビジネスにおいては、クライアントの業種それぞれの深い専門知識が求められるケースが少なくありません。
こうした専門性は、やはり本職でその業種で働いた経験を持つ人材が持っています。
特に大手のコンサルファームでインダストリー別のチームを抱えている場合は、各業界の知見を常に最新のものとするために、それぞれのインダストリーに専門性を有する人材を継続的に求めています。
現在の業務で、特定業界の専門性を培っている方は、誰しもその専門性を武器にコンサルファームに転職する余地があるといえるでしょう。
コンサルと親和性のある領域のスキルや経験
コンサルファームでは企業の経営におけるさまざまな課題を取り扱いますが、特に以下のような領域は課題テーマやそれを解決させるためのツールとしてしばしば活用されます。
- 経営計画の策定や事業戦略
- 財務戦略
- M&A
- マーケティングetc.
いずれもコンサルファームでよく目にするテーマですが、ふと考えてみるとこれらそれぞれは、コンサルファーム以外でも経験をつけることができる領域であることに気づくでしょう。
経営計画の策定や事業戦略は企業の経営企画部などがおこなうものですし、財務戦略は財務部がおこないます。
またクライアントへのソリューション提供という意味では、投資銀行では財務戦略の提案やM&Aなどは頻繁に取り扱います。
マーケティングもある程度の規模の企業であれば専門的に取り扱う部署があるはずです。
これらのいずれかのビジネスをおこなう部署の業務経験があれば、それはコンサルファームで他社にソリューションを提供するうえで充分に役立ちます。
むしろ組織の中でソリューションを推進するうえでの勘所や難しさを分かっていることから、コンサルファームで懸念されがちな、現実感のない「絵に描いた餅」ではならないソリューションを提供可能であると期待されます。
そのため、他業種でもこれらコンサルのプロジェクトテーマと親和性のある分野の経験者は、コンサル未経験でも充分に転職できる可能性はあるのです。
ITに関する素養
最後はここまででも幾度か出てきました、ITに関する知見や経験です。
以前はITの中でも「上流」と呼ばれるプロジェクトマネジメントなどの経験者が特に優位と言われていました。
現在でも確かに上流工程の経験者が優位ではありますが、今は多くのコンサルファームが上流から下流まで幅広く手がけています。
先にも紹介したIT人材のニーズの高さも背景に、IT関連のスキル経験があれば、コンサルファームに転職するチャンスは充分にあるといえるでしょう。
その中でも優先順位をつけるとすれば、おおむね次のような順序でニーズが高いといえます。
- DX経験者。実際に企業をクライアントとしてDXの提案や実行支援の経験
- 企業内にてDXを推進するIT系の部署在籍者
- プロジェクトマネジメントなどIT企業の上流工程経験者
- SEなどでの下流工程の経験者
- 企業内のシステム系の部署でのシステムの運用・保守などの経験者
コンサルで活かせるスキルがあれば他業種からのコンサル転職は充分に可能
一般的に難関というイメージのあるコンサルファームですが、実のところ積極的に人材を求めており、たとえ他業種からの転職でも、コンサルに活かせるスキルや知見を持っていれば、転職のチャンスは充分にあります。
そのうえで面接や試験対策を万全にしておけば、他業種からのコンサルファームへの転職の道がひらけるでしょう。
未経験でのコンサルファームへの転職を成功させるためには、これまでのビジネス経験の中で、コンサルファームで活かせるスキルを明確にすることが大切です。